本論文は, ロボットにより紐を操作する際の視覚・行動系の協調動作に関する研究について述べたものである.紐のように柔構造の物体を操作するには視覚情報の利用が必要不可欠である.本研究では視覚情報を利用して動作を修正し, 動作結果をもとに注視する領域を制御し動作確認をするという協調動作の作業例として紐のハンドリングをとりあげる.
本論文では, 視覚・行動系の協調動作の実現方法を解析し, 紐のハンドリング実験に用いたハンド・アイ・システムと視覚処理アルゴリズムについて述べる.協調動作を実現するための手法として, 局所領域を注視する視覚機能, 座標系間の較正, 視覚による動作確認, 視覚による操作量の修正法について述べる.紐の操作実験は紐をつかんでリングに通したあと, 紐をつかみ直して結ぶという一連の動作からなる.実験システムは, 両眼立体視システム, 6+1自由度アームシステム, 作業記述用のLispシステムからなる.線分領域の画像処理を組合せて対象を認識し, 両眼立体視によって3次元計測を行ない環境の認識と動作の制御を実現している.
視覚により得られる情報を基に操作量を修正し, 動作の確認を視覚により行なうことによって, 柔軟な紐を3次元空間で操作することができるということを実験により確認した.