水産増殖
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胎盤性生殖腺刺激ホルモン投与により誘起されたブリ卵巣卵の成熟過程
松山 倫也香川 浩彦有元 操丸山 敬悟広辻 日出夫柏木 正章劉 鋭
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1996 年 44 巻 2 号 p. 189-195

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抄録

1) ブリの卵成熟機構を解明するための基礎的知見を得るため, 卵黄形成がほぼ終了した雌親魚10尾にHCGを投与し, 個体別にHCG投与から卵成熟に至るまでの卵巣卵組成, および各種ステロイドホルモンの血中量の変化をモニターした。
2) HCG投与後のブリの卵巣卵の発達は個体間でよく同調していた。投与時 (0時間) における卵巣成熟度は第2次卵黄球期で, 投与後24-36時間で卵巣形成が終了して核移動が起こり, 48時間で全個体の卵成熟が完了した。
3) テストステロン (T) およびエストラジオール-17β (E2I) の血中量は, HCG投与後24時間までは高い値を示したが (T, 3.0-4.6ng/ml; E2, 16.7-20.Ong/ml) , その後減少し, 48時間では最低値を示した (T, 0.7ng/ml; E2, 6.0ng/ml) 。
4) 17α, 20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン (17, 20β-P) の血中量はHCG投与後6時間で最高値0.42ng/mlに達した後, 減少した。即ち, 血中17, 20β-P量の変動傾向は卵巣の成熟過程と相関しておらず, 17, 20β-P以外のステロイドがブリの卵成熟誘起ホルモン (MIH) として作用している可能性も考えられた。

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© 日本水産増殖学会
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