熱帯農業
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フィリピン・パンパンガ州ピナツボ火山灰由来土壌のサトウキビ栽培における砂糖収量の改善
―施肥改善による砂糖収量の向上―
横井 大輔池田 浩一杉本 明
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2005 年 49 巻 1 号 p. 61-69

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抄録

ピナツボ山噴火による降灰で収量が低下したサトウキビ圃場の栽培改善を目的に, フィリピン, パンパンガ州アラヤットにおいて施肥改善が砂糖収量向上に与える効果を検討した.尿素施肥区 (慣行区) , 化学肥料区 (りん酸, カリウムを補填) , 液肥区 (サトウキビ廃糖蜜を主原料としたグルタミン酸発酵副生液由来) , 液肥とバガス堆肥の組合わせ処理区を設け, 新植~株出し3回まで, 計4年間4作を実施した.4回にわたる収穫の平均可製糖量, 原料茎重, 茎数, 一茎重, 一茎重維持率 (株出しにおける一茎重の新植時の一茎重に対する割合) は, いずれの改善区も慣行区を上回った.堆肥施用区は特に高かった.平均可製糖量は平均原料茎重との正の相関が高く, 平均原料茎重は, 平均原料茎数, 平均一茎重, 平均一茎重維持率, および平均茎長との間に高い正の相関が認められた.堆肥施用区は茎数が多く, 株出し栽培でも一茎重が維持され原料茎重が多かったが, 慣行施肥では株出し移行に伴う一茎重の減少が大きかった.この結果は, パンパンガ州の慣行的な栽培では, 株出しの進行によって茎の発生位置が浅くなり, 根圏土壌の容量が減少して養水分供給が減り, 茎の生育が抑制されて低収になるが, 堆肥や液肥施用等の施肥改善により根圏土壌の養水分供給条件が改善され, 茎の生育が改善されて多収を得ることが可能であることを示している.

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