日本胸部疾患学会雑誌
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肺動脈腫瘍塞栓症: 臨床像と病理所見の関係について
田村 厚久松原 修
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1993 年 31 巻 10 号 p. 1269-1278

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抄録

肺動脈腫瘍塞栓症における臨床像と病理所見の関係を解明するため, 肺癌を除く癌剖検318例を検討した. 67例 (21%) には1個以上の肺動脈に腫瘍塞栓を認め, 12例 (3.8%) では腫瘍塞栓は多発性で死亡に寄与するものだった. この12例 (肝癌6例, その他6例) を肺動脈腫瘍塞栓症症例とし, 詳細に解析した. 肝癌では亜広範肺血栓塞栓症様の, 他の癌では急性の微小肺血栓塞栓症様の臨床像を示していた. 剖検肺では肝癌の全例に肉眼的, 顕微鏡的腫瘍塞栓と3例に肺梗塞を認め, 他の癌の全例に毛細血管に及ぶ顕微鏡的腫瘍塞栓と4例にびまん性肺胞傷害を認めた. 肝癌1例と他の癌2例には tumor thrombotic microangiopathy の所見も認めた. 肝癌では大静脈への, 他の癌ではリンパ路への浸潤が発症経路と考えられた. 肺動脈腫瘍塞栓症は均一な疾患ではなく, 腫瘍の種類や広がりと関係して急性, 亜急性肺性心やびまん性肺胞傷害など様々な形の肺血管床の傷害像を示す事を臨床医は熟知する必要がある.

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