1993 年 31 巻 10 号 p. 1297-1302
症例は50歳の男性で, 主訴は咳嗽と呼吸困難であった. 塗装業に従事し始めた約1ヵ月後から呼吸困難が出現し, 胸部X線像にてびまん性陰影が認められたが, 入院にて急速に改善したため再び塗装業に復帰したところ, 徐々に喘鳴を伴う呼吸困難が増悪した. 画像診断からびまん性間質性肺炎が疑われた. 気管支肺胞洗浄および肺生検にてアレルギー性滲出性間質性肺炎と考えステロイド剤を投与したところ, 画像所見, 呼吸機能ともに急速に改善した. 職場で使用していた Toluene Diisocyanate (TDI) についての暴露試験は陽性で, 本例はTDIによる過敏性肺臓炎と診断された. 本例においてはその病初期に気道過敏性が亢進し, 気道可逆性が認められたことから, 気管支攣縮すなわち気管支喘息様病態が併発したと考えた. イソシアネートによる過敏性肺臓炎の呼吸困難の増悪には気管支攣縮が関与しているかも知れない.