環境感染
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外科手術部位感染サーベイランスの経験
森兼 啓太小西 敏郎西岡 みどり谷村 久美野口 浩恵小林 寛伊
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2001 年 16 巻 2 号 p. 163-168

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抄録

1998年11月より消化器外科手術後の手術部位感染 (SSI) サーベイランスを米国のNNISシステムに従って施行した. 本研究における解析の対象は当科で1998年11月から1999年10月までの12ヶ月間に施行された消化器外科開腹手術症例のうち, 創分類class IまたはII (清潔または準清潔創) の437例とした.感染制御チームの巡回により基礎データを収集し, SSIが疑われる症例は外科医が創を観察しCDCの基準に従ってSSIか否かを判定し, その原因を推定した. 一方, CDCのSSI防止ガイドラインのうち現状を改善することが可能と思われる対策として術後感染発症阻止薬の術前投与の徹底や創閉鎖・ドレーン法の工夫などの介入を行なった. SSI発生率は研究期間中全体で45/437 (10.3%) であったが, 経時的には, 前期4か月, 中期4か月, 後期4か月のそれぞれのSSI発生率は11.2%, 13.3%, 6.5%であり, 後期4か月において有意にSSI発生率の減少をみた.SSIの推定原因からみると, 皮下膿瘍が前期10例, 中期10例に対し後期は0例と有意に減少し, これが全体のSSI発生率の減少に寄与した.本研究期間中に施行した介入は理論的には皮下膿瘍を減少させるものであり, 介入の有効性が示された.

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© 日本環境感染学会
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