工業化学雑誌
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分子軌道法とポーラログラフに基づぐキサンテン系色素のπ 電子エネルギー準位の計算と写真作用の考察
谷 忠昭菊池 真一細谷 一雄
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1968 年 71 巻 3 号 p. 322-326

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抄録

色素の写真作用の機構を電子論的に考察するために,キサンテソ系色素のπ電子エネルギー準位を,分子軌道法により電子計算機を用いて計算し,またポーラログラフを測定した。そして,分子構造の類似した,写真用減感色素を含む塩基性色素と併せて,分子軌道法による色素のπ電子エネルギー準位の計算値,ポーラログラフ半波電位および励起エネルギーの値をもとにして,写真乳剤中の色素のπ電子エネルギー準位を求め,臭化銀の電子エネルギー準位ど比較して,色素の写真作用の機構を考察した。その結果,写真用増感色素の乳剤中での最低空準位は,-3.35eV(ローズベンガル),-3.37eV(エリスロシン,エオシン),-一3.46eV(アクリジン,オレンジ)で,臭化銀の伝導帯の底(-3.5eV)よりエネルギー的に高いが,減感色素のそれは,一3.92eV(フェノサフラニン),-4.13eV(メチレン・ブルー),-4.11eV(カプリ・ブルー)で,かなり低いことが示され,色素の写真作用が,臭化銀と色素分子間の電子伝達に基づくことが示唆された。

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