日本化學雜誌
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濃厚ゼラチンゲルのレオロジー的性質 --尿素を添加したゼラチン水溶液ゲルの応力緩和--
渡瀬 峰男荒川 泓
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1969 年 90 巻 7 号 p. 658-663

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抄録

尿素を添加した濃厚ゼラチンゲル試料について鎖式応力緩和計を用いて,応力緩和実験を行なった。分子量約2×104のゼラチンの17.8~23.0wt%の濃厚水溶液に4mol/lの濃度まで尿素を添加した試料ゲルについて,7.8~18.2℃の範囲の温度で,4時間までの応力緩和曲線を求めた。緩和曲線は3個のMaxwell模型を並列にした力学模型で解析し,その結果について考察を行なった。
ゲルの主要三次元構造に対応するとみられる最長緩和時間を有するMaxwell要素に属する弾性定数E1は,ゼラチン水溶液ゲルに尿素を添加するにつれて減少し,4mol/lでゲル弾性率は,尿素無添加の同濃度ゼラチン水溶液ゲルのゲル弾性率の約20%程度にまで減少した。このMaxwel1要素に対応する緩和時間τ1は,尿素添加量の増加につれて減少する傾向がみられるが,その減り方はE1の場合より緩慢である。τ1の温度変化から求められた見かけの活性化エネルギーΔH1は,ゼラチン濃度17.8~23.0wt%の濃厚水溶液ゲルに尿素を0~4mol/lの濃度範囲で添加した全試料ゲルを通じて,尿素添加量に依存せず,約7~10kcal/molであった。これは既報の尿素無添加の場合とほぼ一致する。
以上の結果,ゼラチン水溶液ゲルに尿素を添加するとゲル形成能のうける影響は,既報の寒天ゲルに尿素を添加した場合と本質的に似た特徴がみられた。

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