育種学雑誌
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蚕の発育速度、化蛹歩合及び繭形質の二面交雑による遺伝分析
蒲生 卓磨平林 隆
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1983 年 33 巻 2 号 p. 178-190

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抄録

蚕の日本種及び中国種の改良種8品種を用い,二面交雑により,発育速度(5齢期),化蛹歩合,繭重,繭層重,生糸量歩合,繭糸長,繭糸繊度及び解舒率の8形質について遺伝分析を行った。発育速度,生糸量歩合,繭糸長,繭糸繊度,解舒率は不完全優性を示したが,繭層重は完全優性,化蛹歩合と繭重は超優性を示した。エピスタシス効果は化蛹歩合,繭重,繭糸繊度及び解舒率において認められた。細胞質効果は化蛹歩合と繭糸繊度において認められた。また,発育速度では細胞質効果によらない正逆交雑間の差異が認められたが,これは伴性の成熟遺伝子(LmとLm+)に起因するものと判断した。有効遺伝子数は,発育速度,解舒率,繭糸繊度で少なく,化蛹歩合,繭層重,生糸量歩合,繭重で多いものと推定された。また,遺伝率(狭義)は生糸量歩合,繭糸長で高かったが,化蛹歩合と解舒率では極めて低かった。これらの結果から,繭重,化蛹歩合及び収繭量はF1における雑種効果の利用により改良の行える形質であるが他の形質は選抜による改良の方が適した形質であり,とくに解舒率は環境条件を制御し,優性遺伝子を集積することにより,改良は可能なものと推察された。

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