日本農芸化学会誌
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米の脂質成分と組織内分布
平山 修松田 英幸
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1973 年 47 巻 6 号 p. 371-377

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抄録

玄米「こしひかり」の各複合脂質成分を同定定量し,その成分組成を明らかにした.糖脂質はステロール系糖脂質およびグリセロ糖脂質からなり,リン脂質はホスファチジル・エタノールアミン,レシチンなどを主成分としていた,全脂質の80%はヌカ層に存在し,残りの20%は胚乳部に分布していた.前者の複合脂質は糖脂質量に富むのに対し,後者のそれはリン脂質と糖脂質の等量からなっていた.
次に,米胚乳部を機械的酵素的に破壊し,水溶性画分,プロテインボディ画分およびデンプン粒画分に分別して,胚乳脂質の分布を調べた.プロテインボディ画分は0.5~4μのタンパク顆粒からなり,胚乳タンパク質の約76%,および胚乳脂質の約80%を含有していた.他方,米胚乳部を溶剤抽出によって水溶性画分,酢酸可溶性画分,スラッジ分およびデンプン粒画分に分画すると,スラッジおよびデンプン粒画分にも,かなりの量の脂質が分布し,上記分画法と異なる結果を示した.これは,細胞内器官の破壊によって成分が遊離し,再配列したためと推測された.また,デンプン粒を破壊して独出した内部脂質は,遊離脂肪酸以外にリゾ型脂質を含む特異な組成を示した.

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