2014 年 71 巻 5 号 p. 187-201
包装材料において生分解特性をもち植物や生ごみを原料とする機能性材料であるポリ乳酸(PLA)が注目されている.PLA膜の包装材料用途への展開として,PLA膜の気体・蒸気透過性についての研究が活発に行われている.本報では,熱・冷却処理,有機溶媒処理,真空紫外線処理を行うことによって結晶構造を操作したPLA膜の膜構造とこれらが気体・蒸気透過性に与える影響について報告する.一般的に膜中の高分子の結晶化度が大きくなるにつれて,気体・蒸気透過性も低下するといわれているが,PLA膜においてはその傾向は当てはまらない.PLA膜は,気体透過性がL体/D体の光学異性体の比率が98.7:1.3–50:50の範囲内で影響をうけず,結晶化度の領域は0–25%の範囲内では影響を受けない興味深い材料である.これは,熱処理,溶媒処理,光処理においても処理条件に関わらず同様の傾向を示した.