日本応用動物昆虫学会誌
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コナガの発生消長と生命表
伊賀 幹夫
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1985 年 29 巻 2 号 p. 119-125

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抄録

1) コナガのフェロモン・トラップによる誘殺数からその年間の発生変動を考慮し,1982年4月から2年間,東京都内のキャベツ畑で10枚の生命表を作成した。産卵密度から見て,誘殺数の変動はコナガの発生量をよく反映していた。
2) 卵期のおもな死亡要因として卵寄生蜂のメアカタマゴバチによる寄生,アリなどによる捕食および物理的な死亡を認めた。これらのうち,とくに夏季には卵寄生蜂の寄生率が高かった。幼虫の死亡個体を直接観察したところ,1∼2齢期では降雨による水没死がおもな要因であった。また,3∼4齢幼虫期のそれは明らかではなかった。蛹では,5∼9月までスズメによる捕食割合が高かった。
3) 生命表から,コナガ個体群の増加期の卵から成虫期の総死亡率は低く,それに続く減少期では高かった。盛夏季の低密度と秋の回復期および冬季では,総死亡率は低い値を示し,これらは季節的変動と矛盾しなかった。
4) VARLEY and GRADWELL (1960)の方法にしたがって基本要因分析を行ったところ,変動主要因は卵期に存在した。

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