日本作物学会紀事
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重量法による水稲各器官中の非構造性炭水化物の簡易定量法
大西 政夫堀江 武
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1999 年 68 巻 1 号 p. 126-136

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抄録

水稲各器官中の非構造性炭水化物(NSC)の簡易定量法としての重量法の有効性を検討した. 試料約0.5gに蒸留水30mLを加えてホットプレート上で加熱してデンプンを糊化, 放冷後, リン酸緩衝液(KH2PO4;12.08g L-1, Na2HPO4・12H2O;3.98g L-1, NaN3;0.025g L-1)20mLにα-アミラーゼ1.5mgとアミログルコシダーゼ0.5mgを添加した懸濁液を加え, 40℃・24時間振どう培養を行い, NSCの抽出を行った. 重量法では, NSC抽出後, 全ての残渣を濾紙(Advantic Toyo No.5A)上に濾別し, この残渣乾物重を測定し, それと試料乾物の差より可溶性物質含有率(NSCWS)を算出した. 比色法では, この濾液に弱酸加熱処理を加えた後, ρ-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド法により, グルコース換算量の還元糖含有率(NSCGL)を測定した. 水稲の葉身では両分析値間に一定の関係はなかったが, 葉鞘+稈および穂では, 極めて高い正の相関(r2≧0.912)があり, この関係には栽培条件, 品種, 生育時期等による明確な差異はなかった. 誤差の伝播法則を用いて画法の誤差を比較した結果, 重量法のNSCWS分析値およびそのNSCGLへの変換値の方が, 比色法のNSCGL分析値よりも誤差が小さかった. 近赤外分光分析法(NIR法)に用いた場合, NSCWSの方がNSCGLよりも誤差が小さかった. 以上より, 重量法は, それ単独で, あるいはNIR法と結合させることで, 水稲の葉鞘+稈および穂のNSCを簡易・迅速・高精度に分析できること, NSCWSはNSCの指標となること, そして, 回帰式NSCGL=1.10NSCWS-11.7(葉鞘+稈), NSCGL=1.07 NSCWS-8.2(穂)により, NSCGLにも高精度で変換できることがわかった.

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