分析化学
Print ISSN : 0525-1931
分析化学総説
キレート樹脂, キレート試薬含浸樹脂を用いる金属イオンの認識と分離濃縮
松永 英之
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2001 年 50 巻 2 号 p. 89-106

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抄録

金属イオンに対して選択的なイオン交換特性を示す固相吸着材の中から, いわゆる狭義のキレート樹脂である共有結合型キレート樹脂と, その拡張型である試薬含浸型キレート樹脂とを取り上げ, その開発の流れと現状の問題点, そして将来への展望について概説した. キレート樹脂のような固相分離材を用いれば, 簡素で環境汚染の少ない分離濃縮操作を実現できる. 固相分離濃縮法は, このような理由から21世紀の中心的分離手法の一つとなる可能性を秘めた手法であり, キレート樹脂はその代表的構成要素となりうる分離材である. いずれの型のキレート樹脂においても, 金属イオンを認識する官能基の種類が極めて多様化してきており, 高機能化の試みが続けられている. 特に, 共有結合型キレート樹脂は, 分子刷り込み (molecular imprinting) 法による合成がその特性の向上に大きく寄与する可能性があること, また試薬含浸型キレート樹脂の調製では, 樹脂内における試薬の存在状態を制御することが機能化の有力手段であることを紹介した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2001
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