Papers in Meteorology and Geophysics
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海風によるいぶし現象の数値実験
木村 富士男竹内 清秀
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1978 年 29 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

海上で安定な成層の大気が,日射により加熱されている陸地へ侵入してくると,陸海の表面粗度と表面温度の差によって内部境界層が形成される.海岸近くに汚染源が存在すると,この内部境界層のためにいぶし現象が発生することがある.この研究ではいぶし現象の性質を明らかにするため,次のような2段階の数値シミュレーションを行なう.まず混合距離論に基ずく接地境界層の方程式系により内部境界層の数値シミュレーションを行ない海岸付近の拡散場を求める.次にこの結果を使って連続点源から排出される汚染質の移流拡散シミュレーションを行ない,濃度分布を求める.
接地境界層の式をべ一スにしているため,大きなスケールへの適用はできないが,次に示すような結果が示された.
(1)中立成層で海陸で表面粗度だけが異なる場合には,はっきりしたいぶし現象は発生しない.
(2)風上が安定で表面温度差のある場合でもいっでもいぶし現象が発生するわけではない.風上側のstabilitylength L0と表面温度差ΔTがある関係,たとえば有効煙突高h=52.5m,L0=50mではΔTが2°Cぐらいの時に,最高着地濃度は最大となる.しかしながらΔTがそれより大きくても小さくても最高着地濃度は減少し,いぶし現象は明確でなくなる.
(3)有効煙突高の低い場合には風上が安定でΔTの小さい場合に特にいぶし現象を起こしやすくなる.
(4)一定の発生源による汚染濃度分布に強い影響を及ぼすパラメータはL0とΔT,それに有効煙突高での風速Uhであり,海陸の粗度Z00,Z01はそれほど支配的なパラメータとはならない.

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© 気象庁気象研究所
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