紙パ技協誌
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研究報文
バイオエタノール生産プロセスとしての酸性サルファイト蒸解の優位性
谷藤 渓詩高橋 史帆梶山 幹夫大井 洋中俣 恵一
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2011 年 65 巻 5 号 p. 494-505

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抄録

マグネシウムベースの酸性サルファイト廃液(SSL)中に単糖を高収率で得ることを目的とし,カラマツ(Larix leptolepis)材,アカシア(Acacia mearnsii)材,およびタケ(Phyllostachys pubescens)材の酸性サルファイト蒸煮処理を行い,炭水化物の溶出挙動を詳細に検討した。また,針葉樹材サルファイトパルプの酵素糖化性が優れている原因を明らかにするため,セルラーゼのパルプへの吸着の挙動について調査した。
酸性サルファイト蒸煮をpH1.4および8時間で行った時,カラマツSSLのグルコース含有量は7.7%であり,アカシアSSLのグルコース含有量より高かった。カラマツ材グルコマンナンの溶出は,アカシア材キシランに比べて遅く,また溶出した単糖およびオリゴ糖の分解の速度も遅いということが明らかとなった。
また,カラマツ材酸性サルファイトパルプの酵素糖化残さ中のリグニンに対する酵素吸着量は,30―80FPU/lignin gであり,アルカリパルプの吸着量(100―130FPU/lignin g)に比べて低かった。針葉樹材サルファイトパルプの酵素糖化性が優れている原因の一つは,パルプ中の残留リグニンの酵素吸着量が小さいためであると推定される。
針葉樹材では,pH1.4の短時間の蒸解で得られたパルプを酵素により加水分解することで,効率的に単糖が得られると期待できる。

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© 2011 紙パルプ技術協会
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