肝臓
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症例報告
肝切除18年後に初発時と異なった肝病態を背景に再発した肝細胞癌の1例
伊坪 真理子小池 和彦長田 正久小林 進
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2005 年 46 巻 5 号 p. 277-283

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抄録

高分化型肝細胞癌切除18年後に残肝再発を確認した男性症例を経験した. 初発時はHBe抗体陽性B型肝炎ウイルス (HBV) キャリア状態にあり, 64歳時に肝切除を施行. 切除標本より慢性肝疾患を母地としない肝S4の4cm大の高分化型肝細胞癌であった. 輸血後肝炎と考えられる急性肝炎状態となり, 3年後に沈静化する間にHBs抗体陽転化を示した. その後C型肝炎ウイルス (HCV) 持続感染が判明し, 80歳頃よりトランスアミナーゼ上昇が持続したが, 血中HBV DNAは持続陰性であった. 外来にて経過観察中, 78歳頃より肝S7に小結節性病変が検出され緩徐に増大, 82歳時に動脈血流に富む1.7cm大の肝細胞癌と診断し, 加療した. 非癌部肝組織は慢性肝炎で, 組織中HBV DNAも検出されなかった. 本症例は初発時には慢性肝疾患なく, 発癌にはHBVの直接的関与が, 再発時にはHCV感染持続による慢性肝炎を背景とした発癌が考えられた.

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© 2005 一般社団法人 日本肝臓学会
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