日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ペクチンの結合金属元素とNaClのイオン交換反応について
金子 憲太郎渡辺 光代佐藤 千寿子前田 安彦
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1985 年 32 巻 2 号 p. 94-100

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抄録

既報1)で大根ペクチンのK, Ca, MgはNaClのNaとイオン交換することを推察した。この現象は今まで明らかにされていなかったことであるし,さらにペクチンの化学反応性の基礎的知見としても重要と思われる。従って,本報では1%HCl含有メチルアルコールでの洗浄によって金属元素をほぼ除去した大根ペクチンにKCl,CaCl2・2H2O, MgCl2・6H2Oを混合・脱塩することによって各金属元素を付加させたK-, Ca-, Mg-ペクチネート及びそのらの混合コンプレックス溶液にNaClを添加・脱塩してからNa, K, Ca, Mgを分析し各ペクチネートの金属元素とNaClのNaとのイオン交換性を検討した。なお,調製した各ペクチネートは赤外線吸収スペクトルを測定して,各金属の結合を確認した。そして,その結果,各ペクチネートはNaClの添加によりそれぞれの金属元素が減少し,それとは逆にNaが増加した。そして,その現象はK-ペクチネートが最も顕著であり,以下Mg-ペクチネート,混合コンプレックスと続き,Ca-ペクチネートのCaの減少とNaの増加が最も少なかった。しかし,これら金属の増減には当量関係が認められなかった。
以上の結果からペクチンに結合しているK, Ca, MgはNaClのNaとイオン交換反応を起こし,さらにその反応はK>Mg>Caの順で起こりやすいことが明らかになった。

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