日本ファジィ学会誌
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行列ベース遺伝的アルゴリズムによる区間係数を伴う2目的最小木問題の一解法
玄 光男周 根貴高山 政人
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1998 年 10 巻 6 号 p. 1144-1153

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抄録

最小木(Minimum Spanning Tree:MST)問題は,各アーク(arc)の長さが与えられているネットワーク(network)において,それに属するアークの長さの総和が最小になるような木を求める問題であり,代表的なネットワーク問題の一つである.従来,MST問題におけるアークの長さは専門家の経験や知識により実数値として設定されてきた.しかし現実には,専門家の経験あるいは知識が漠然としており,係数を一つの確定的な値として設定できない場合もあり得る.このような状況のあいまいさを表現する方法としてファジィ理論があるが,意思決定問題を実際にファジィ数理計画問題として定式化するためには,目的関数や制約条件式の関数あるいは満足領域や制約領域に対するメンバシップ関数を定めなければならず,これは意思決定者にとって必ずしも容易なことではない.これに対し,目的関数や制約条件の係数を区間にして状況のあいまいさを表現することは比較的容易である.一方,現実の問題として,複数の目的関数を同時に扱う多目的計画問題(multiple objective programming problem)が存在し,各種解決が提案されている.その中でも,二つの目的関数を件う問題は現実の問題として多く存在するため,最短経路問題等を含めた各種ネットワーク問題でよく取り扱われている.一般に,上で述べた区間係数や複数の目的関数をMST問題で取り扱う場合には,NP困難な組合せ最適化問題となる.最近,このような組合せ最適化問題の効率的な解法として,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)が注目されており,様々な問題に適用されている.本論文では,あいまいさを表現するために区間を導入し,コストと所要時間のような二つの目的関数を考慮することのできるMST問題の定式化を行うとともに,ノード同士の接続の有無を表現することのできる遺伝子表現(木のコード化)を用いたGAによる効率的な解法を提案する.また,数値実験により提案する手法の有効性を検討する.

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© 1998 日本知能情報ファジィ学会
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