現行のNTSC方式における色信号の帯域幅は, 規格制定時の視覚特性の研究成果と伝送路帯域の制約から決められたが, その後の視覚研究によれば当時とは異なる結果が報告されている.また, 当時は妥協できると考えられた狭帯域色信号の帯域幅も近年のテレビジョン高画質化傾向に伴い色にじみとして目立つようになってきた.
本論文では, NTSC方式の画質改善の一方法として, 色信号の高域成分をフィールド順次伝送することにより狭帯域色信号の帯域を拡大する方式を提案した.本方式の時空間スペクトルを求め, それをもとに本方式の画質やNTSC受像機に対する両立性を検討しだ.その結果, 本方式が良好な両立性を持ち, 時空間周波数に関する伝送帯域の面でも充分な値を持つことが明らかになった.本方式をハードウェアにより実験したところ, 色の鮮やかな縞やエッジを含む画像で画質改善効果が認められた.