超音波医学
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原著
男性乳癌と女性化乳房症の超音波所見の検討
若木 暢々子伊藤 吾子周山 理紗三島 英行
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2022 年 49 巻 2 号 p. 151-157

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抄録

目的:男性乳癌は稀な疾患である.男性最多乳腺疾患である女性化乳房症との鑑別には乳房超音波検査が有用であるが,形態のみでは診断に苦慮することがある.今回Bモードに血流と硬さ評価を加えた超音波所見を後ろ向きに比較検討した.対象と方法:2000年1月から2019年10月に乳房腫瘤や疼痛を主訴に受診し,超音波検査を行い,男性乳癌または老年期女性化乳房症の診断となった92例を対象とした.Bモードにて形態をnodular,dendritic,diffuse glandularの3つに,血流は視覚的に4段階に,硬さはTsukuba elasticity score(スコア)の5段階に分類し比較した.女性化乳房症の形態ごとの特徴について検討した.結果と考察:男性乳癌は6例,女性化乳房症は86例であった.Bモードでは男性乳癌は全例nodularで,女性化乳房症はnodular28例(32.6%),dendritic17例(19.8%),diffuse glandular 41例(47.7%)であった.血流評価は男性乳癌5/6例(83.3%),女性化乳房症21/34例(61.8%)がhypervascularまたはvascularであった(P=0.399).硬さ評価では男性乳癌はスコア5が3/5例(60%),女性化乳房症は46/49例(93.9%)がスコア1と2であり,両群間に有意差を認めた(P<0.005).血流と硬さ評価のArea Under the Curveは0.7と0.994であった.女性化乳房症のnodular,dendriticは10/15例(66.7%),8/11例(72.7%)がhypervascularまたはvascularであった.Diffuse glandularの35/41例(85.4%)は血流が未評価であった.女性化乳房症の形態ごとで硬さ評価に明らかな特徴差はなかった.結論:男性乳癌と女性化乳房症の鑑別診断には超音波による形態評価に加え,硬さ評価が有用である.

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© 2022 公益社団法人 日本超音波医学会
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