日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
細胞性免疫によるエイズ克服戦略
杉本 正信大石 和恵
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 51 巻 2 号 p. 559-569

詳細
抄録

エイズのキャリアでは一見動きがあまりないように見えるが, 実際には生体の防御機構によるHIV (ヒト免疫不全ウイルス) の不活化と, HIVによる免疫細胞 (CD4+T-細胞) の破壊が同時に進行する動的平衡状態であることが明らかになってきた。また, 間違いなくHIVに晒されているのに感染しないハイリスク・グループが存在するが, この場合にはHIVに対する細胞性免疫が成立している場合の多いことが知られている。動物実験では, サル免疫不全ウイルスあるいはウシ白血病ウイルスの感染防御に細胞性免疫が関与していることが強く示唆されている。このような一連の事実は, 細胞性免疫を中心とする生体の防御機構がHIVを始めとするレトロウイルス感染防御で重要な働きをすることを意味する。本総説では上述した事実をレビューするとともに, それに立脚したワクチン戦略およびその問題点を考察した。

著者関連情報
© 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top