日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
百日咳菌の病原因子
最近の研究動向から
佐藤 博子
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 51 巻 3 号 p. 737-744

詳細
抄録

百日咳はワクチン接種の普及により日本では過去の病気となりつつあるが, 予防接種の行き渡らない国々では今なお猛威を奮っている小児の呼吸器伝染病で, 病因的にはジフテリアと同様, 毒素性疾患として理解し得る。最近では伝染源としての成人感染者が問題視され始めたが, 呼吸器感染症の常として根絶は殆ど不可能であり, 感染の予防, 治療に関する研究成果のみが百日咳の制圧を可能にする途である。本小文では, 百日咳菌の産生する病原因子のうち, 感染の第一段階である宿主細胞への菌の吸着に関与する接着因子 (繊維状赤血球凝集素, 線毛, パータクチン) および百日咳症の発現に関与する毒素類 (百日咳毒素, アデニレートシクラーゼ毒素, 気管上皮細胞毒素, 皮膚壊死毒素, 内毒素) の産生, 性状, 作用について百日咳の感染と予防, 治療の観点から最近の知見を中心に概説した。これらの因子の複合作用の結果である百日咳症の理解へ向けての研究が発展し, 成果の生かされる日の近い事を期待したい。

著者関連情報
© 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top