日本大腸肛門病学会雑誌
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経膣分娩時肛門括約筋損傷による便失禁65例の検討
早期発症群と晩期発症群の比較
味村 俊樹倉本 秋上西 紀夫M.A. Kamm
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2003 年 56 巻 7 号 p. 325-332

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抄録

目的:分娩時肛門括約筋損傷による便失禁の臨床像と直腸肛門機能の特徴を明らかにする.
方法:病歴,直腸肛門機能検査,肛門超音波検査に基づいて,分娩時損傷が便失禁の原因と診断した65例を対象として,患者背景,分娩歴,症状,検査結果,推奨治療法を検討した.
結果:分娩直後に発症した早期発症群(早発群)32例と,分娩から1年以上経過してから発症した晩期発症群(晩発群)33例に二分された.早発群は晩発群よりも約20年若年発症で,分娩時の肛門括約筋損傷の頻度が有意に高かった.症状,括約筋損傷部位,肛門管静止圧,直腸肛門知覚能,陰部神経終末伝導時間は両群で差がなかったが,随意収縮圧は早発群で低い傾向を示した.治療法は,早発群では手術が,晩発群では保存的治療が多く推奨されていた.
結論:分娩時肛門括約筋損傷による便失禁には早期発症群と晩期発症群があり,早期発症群は約20年若年発症で,損傷の程度が高度であり,治療法として手術が多く推奨されていた.

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