日本透析医学会雑誌
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在宅医療におけるPDラストの有用性と課題
中野 広文竹口 文博岩澤 秀明丹野 有道木村 弘章中山 昌明細谷 龍男
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2002 年 35 巻 8 号 p. 1205-1210

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抄録

10例の寝たきり患者に対して, 家族の全介助により施行された在宅腹膜透析 (PD) の有用性を検討した. この透析法は, 患者quality of life (QOL) の保持を目的として, 介護者である家族の意向に従い, バッグ交換の負担軽減に配慮した処方内容であった (PDラスト).
対象患者の8例は男性, 2例は女性であった. 平均年齢は71.6±8.5歳, 慢性腎不全の基礎疾患として糖尿病性腎症は9例, 慢性糸球体腎炎は1例で, 全例, 重篤な栄養失調を呈する終末期透析患老であった. 9例は血液透析 (HD) からの移行であり, HD歴は平均28.9±26.5か月であった. 透析法は, continuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD) の1例を除く9例で, バッグ交換を行う家族の生活に支障のないよう, 間歇的なPDまたはautomated peritoneal dialysis (APD) を採用していた. 在宅PDでは, 訪問診察あるいは看護の際にエリスロポエチンを投与し, ヘマトクリット (Ht) 値を十分に保持することを治療目標とした (平均Ht: 31.1±3.3%).
在宅診療中に精神障害ないし痴呆の進展を認める症例はなかった. 躁鬱病の1例は, テンコフカテーテルの自己破損後に腹膜炎を併発し, 腸管穿孔にて死亡した. 高度痴呆の1例は, テンコフカテーテルを2度自己抜去したため, 再度HDへ変更した. 残り8例は, 死亡までPDを継続した (在宅PD期間: 17.1±10.4週).
今回の在宅PD法では, バッグ交換に対する家族への負担を軽減しつつ, 終末期透析患者の社会的入院が回避された. しかし, 精神疾患ないし高度の痴呆患者への対策など, 今後の課題も多い.

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© 社団法人 日本透析医学会
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