Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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複合糖質による増殖の接触阻害
Raimund J. WieserFranz Oesch高橋 延行川口 吉太郎
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1992 年 4 巻 16 号 p. 160-167

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抄録

形質転換を受けていない哺乳動物細胞の増殖の調節は細胞密度によって厳密な支配を受けている。細胞密度が増加すると、増殖は加速度的に抑制され、ついにはコンフルエントな状態で停止する。我々はコンタクトインヒビンと言われる糖タンパクを形質膜から単離した。固定化されたコンタクトインヒビンはヒトの二倍体繊維芽細胞の増殖の接触依存性阻害に関与している。これは培養皿で疎に成育している細胞の増殖を、可逆的で且つ毒とは異なる様式でピコモルのレベルで阻害するが、一方、可溶化された状態では活性がない。生物学的に活性な部位は専らN-結合型糖鎖に存在している。更に効果的に増殖を阻害するにはN-結合型糖鎖の末端にβ-結合したガラクトース残基が存在しなければならない。抗コンタクトインヒビン抗体の存在下でヒト繊維芽細胞を培養することによって、細胞は2倍の飽和密度に達することで増殖し、同時に広範囲な複雑に十字交差した細胞とフォーカスの出現を伴う。コンタクトインヒビンは形質膜レセプターと特異的に相互作用し、その結合活性はリン酸化の度合にようて制御されている。癌の無制限の増殖はコンタクトインヒビンレセプターの過度のリン酸化に起因していることが示唆されている。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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