Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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樹状細胞表面におけるC型レクチンとHIVとの結合
先天性免疫による認識とプロセシングかHIV伝播の介在因子か
Stuart G TurvillePaul U CameronDerek HartAnthony L Cunningham加藤 健太郎
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2002 年 14 巻 79 号 p. 255-271

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抄録

樹状細胞(DC)は先天性免疫システムと獲得免疫システムの橋渡しをする細胞である。HIVはこれらの細胞による微生物抗原の取り込みや複雑な輸送経路を利用して初期感染と播種を行っている。T細胞介在性免疫反応が活性化する際DCからCD4陽性リンパ球へ抗原提示情報が伝えられるが、HIVの一部はDC内部のエンドリソゾーム分解経路やこの抗原提示経路を回避する。皮膚のDCのうちランゲルハンス細胞 (LC) に発現する langerin、真皮DC亜集団に発現するDC-SIGNやマンノース受容体 (MR) といったC型レクチン受容体 (CLRs) はすべてマンノース糖鎖を介してHIV gp120と結合することができる。DCのうち末梢に存在する未成熟DCのみがCLRsを介してHIVと結合できる。この結合がCD4/ケモカイン受容体を介した標的細胞膜とHIVとの融合を促進し、あるいはエンドリソゾーム経路への移行を仲介する。CLRを遺伝子導入した細胞株やCLRを発現する単球由来DC (MoDC)は in vitro において融合に依存せずにHIVを運搬できるが、ex vivo あるいは in vivo でのDCの観察結果からCLRが促進するCD4/CCR5介在性のウイルス融合がT細胞へのウイルス感染に必要であることがわかった。すなわち皮膚や粘膜DC上のCLRsとの結合、CD4/CCR5を介する侵入、またウイルス複製の主要な場であるリンパ節内においてDCからCD4陽性リンパ球ヘウイルスを運搬するために、HIVは自身のエンベロープタンパク質に豊富に存在する高マンノース型糖鎖に対するDCの認識機構を利用している。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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