社会学評論
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特集・現代社会論の現在
現代社会論としての地球社会論
その必要性・輪郭・課題
庄司 興吉
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2008 年 59 巻 1 号 p. 37-56

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抄録

現代世界に国際社会が存在することは疑いない.しかし,今日の人類が直面している重要問題の多くがその枠組内での解決の可能性を超えてしまっており,それを超える新しい社会の出現を把握する新しい概念が必要とされている.それを世界社会と呼ぶことも可能であるが,「2つの世界」および「第三世界」の意義が縮小し,地球環境問題が最大の問題となってきている今,地球社会の概念こそが必要である.地球社会は,社会を共同性,階層性,システム性,および生態系内在性の相克と重層化としてとらえる視点から,共同性と階層性の相克の,宗教,国家,市場,都市による一次システム化すなわち帝国のうえに,それを超えて普及してきた二次システム化,すなわち政教分離と民主主義と科学技術にもとづく市民社会の地球的規模への拡大の過程と結果としてとらえることができる.現状では,その共同性はあまりにも弱く,その階層性はあまりにも険しくみえるが,それはそのシステム化があまりに不十分であり,そういう状態のまま地球環境の危機と人口の不均等増加という生態系内在性の問題に直面しているのが,地球社会の現実である.この状況を打開するため,市民の立場からする,地球的情報化の積極的活用,「帝国」的世界システムの批判,新たな主体的意識の高揚,およびNGOsやNPOsなどによる対抗地球社会形成が行われてきている.世界社会フォーラムのような活動が,今後ますます能動的に展開されていくであろう.

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© 2008 日本社会学会
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