日本口腔腫瘍学会誌
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上顎歯肉および硬口蓋原発扁平上皮癌の臨床病理学的検討
山田 隆文和田森 匡小椋 一朗宮倉 毅石川 均山城 正司岩城 博吉増 秀實天笠 光雄岡田 憲彦
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1997 年 9 巻 4 号 p. 314-319

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抄録

東京医科歯科大学歯学部附属病院第一口腔外科を受診した1980年から1994年までの上顎歯肉・硬口蓋原発扁平上皮癌45例について臨床病理学的に検討を加えた。
T分類ではT1: 7例 (15.6%) , T2: 15例 (33.3%) , T: 9例 (20.0%) , T4: 14例 (31.1%) であった。このうち24例 (53.2%) で三者併用療法が施行された。
上顎歯肉・硬口蓋扁平上皮癌の5年累積生存率は58.9% (T1: 80.0%, T2: 83.6%, T3: 40.0%, T4: 42.8%) で, 三者併用療法では60.7%であった。
腫瘍の発育との検討では, 内向性発育を示す腫瘍が, 外向性発育を示すものに比べて治療成績が悪く, 病理組織学的に, 生検時のY-K分類では, 浸潤傾向の少ない3型以下の66.6%に比べて, より浸潤傾向の強い4C, 4D型では33.3%と, 明らかに浸潤傾向が強いほど治療成績が悪かった。骨吸収のない症例では全例が生存し, 歯槽骨に骨吸収を示す症例では57.1% (P<0.05) , 骨吸収が上顎洞に達する症例では44.4% (<0.01) と, 腫瘍が上方へ発育するにつれて治療成績は悪化した。
以上の結果から, 腫瘍の浸潤様式と骨吸収の程度が, 上顎歯肉・硬口蓋扁平上皮癌の予後を左右する大きな因子である可能性が示唆された。

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