2007 年 49 巻 4 号 p. 309-326
地下深部の地下水流速は10-10-1-8m/s程度と推定されているが,既存技術ではこのような極低流速を測定することに限界があった.そこで,著者らはボーリング孔内のパッカで仕切った計測区間中に固体粒子トレーサを浮遊させ,その軌跡を1組の超音波センサで追跡するという3次元流向・流速計測原理を提案した.しかし,ボーリング孔内に機器を設置すると地下水流動が乱れる可能性があるため,数値解析によって,パッカ長・試験区間長及び支柱や超音波センサなどの機器配置による地下水流動への影響を評価・検討した.その結果,トレーサの動きを把握するための計測範囲(約lcm3)をボーリング孔の中央付近に設定する必要があることが分かった.上記の解析結果に基づいてプロトタイプ機器を設計・製作し,室内での性能確認試験を実施した結果,計測目標としていた10-10m/sに近く,しかも実用上問題ないと考えられる1-9m/s程度の流向・流速を計測することができ,計測区間内の地下水流動状況評価手法の妥当性を確認した.