2011 年 48 巻 2 号 p. 47-57
チョコレートの肥育豚用飼料としての有用性を検討するとともに,添加する脂質の脂肪酸組成の違いが肉質に及ぼす影響を明らかにするため,肥育豚に発酵リキッド飼料を給与する対照区,12.2%(粗脂肪含量として5%)のチョコレートを添加するチョコレート区,そしてチョコレート区の粗脂肪含量と同量の大豆油を添加する大豆油区の3区を設けて,体重67kg から110kg までの肥育試験を行った。処理区間で,増体や飼料摂取量および飼料要求率に差は認められなかった。筋肉内脂肪含量と背脂肪内層および筋間脂肪のヨウ素価は,大豆油区がチョコレート区および対照区より高い値(P<0.05)を示した。背脂肪内層の脂肪酸組成は,チョコレート区は対照区と差がなかった。大豆油区は,飽和脂肪酸割合および一価不飽和脂肪酸割合が対照区より低い値(P<0.05)を示したのに対し,多価不飽和脂肪酸はその逆の結果であった。また,チョコレート区の背脂肪内層および筋間脂肪のL*値は対照区および大豆油区より高かった(P<0.05)。以上から,肥育豚へのチョコレート給与は,大豆油給与とは異なり,軟脂を誘発させることなく,対照区より明るい脂肪の豚肉を作出できることから,給与量を制限する必要はあるものの飼料資源として有用であることが示された。