環境化学
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4- (メチルチオ) フェノール類に関する酵母細胞を用いたエストロゲン作用の評価
寺崎 正紀風間 剛橋本 伸哉牧野 正和
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2005 年 15 巻 4 号 p. 855-861

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抄録

本研究は, 国内において農薬登録がなされ, かつ多量に使用されている有機リン農薬原体の分解生成物に注目して, hERαアゴニスト活性を中心に, 酵母ツーハイブリッドアッセイ法を用いて評価した。4-メチルチオ基を含むフェノール類縁化合物にエストロゲン作用能が観測され, これはビスフェノールAの作用能と比較すると2から3分の1であった。
化合物が酵母細胞内へ取り込まれる程度を見積もる指標として, 分子の疎水性指標であるオクタノール/水分配係数 (logKow) や水溶解度 (Sw) を用いた。また, 分子構造とエストロゲン作用能との関係を明らかにするため, 量子化学計算に基づく電荷や双極子モーメントを計算した。この結果, logKowやSwに基づいて予測した酵母細胞内の濃度は, 活性の程度を見積もる上で有効であることが分かった。また, 今回エストロゲン作用能が観測されたフェノール類縁化合物は, 双極子モーメントが2から3Debyeの範囲にあり, A環近傍における各原子上の電荷分布よりも双極子モーメントの方がその作用能と深く関連することが分かった。

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