環境化学
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チオノ (P=S) 型有機リン系農薬から誘導されるオキソ (P=O) 型有機リン化合物の変異原性及びマススペクトルの特徴
小野寺 祐夫前田 真斉藤 晃英
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1995 年 5 巻 3 号 p. 617-624

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抄録

P=S型有機リン農薬が混入している水を塩素又はオゾン処理すると, 農薬は容易に酸化されてP=O型に変換され, 水中に残留することが知られている。このことから, 本研究では10種のP=O型を合成し, それらのマススペクトル及び変異原性を検討した。
P=O型化合物 [ホスフェート: (RO) 2P (=O) -OR, ホスホアミドエート: (RO) 2P (=O) -NHR) ] のマススペクトルは複雑で, α-開裂 (P-OR, P-NHR) , β-開裂 (PO-R, PNH-R) 及び再配列に基づく多数のピークが存在した。分子中のRが脂肪族であるホスフェート (例えば, マラオキソン) 及びホスホアミドエート (例えば, ブタミホスーオキソン, イソフェンホスーオキソン) は比較的小さな分子イオンピークを示した。これに対し, Rが芳香族であると, 安定な分子イオンピークが観察された。
サルモネラTA98及びTA100を用いたAmes試験を行った10種のP=O型有機リン化合物のうち, EPN-オキソン, イソフェンホスーオキソン, マラオキソン及びパラオキソンが変異原物質であることがわかった。クロロピリホスーオキソン, ダイアゾオキソン及びフェニトローオキソンは弱い変異原性を示した。ブタミホスーオキソン, イソキサーオキソン及びトルクロホスーメチルーオキソンはこの研究で行ったいずれの試験系においても変異原性が観察されなかった。

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