2023 年 42 巻 4 号 p. 27-38
日本では長年にわたって企業が芸術支援をしている。近年では資金提供だけでなく,アートプレイス(アートが存在する場所)を企業自らが運営し,関係者のコミュニティを支える事例が注目されている。そこでは,アートプレイスを通じて,企業はステークホルダーとの関係を深め,企業への好意的な態度を獲得している。そこで,本稿の目的は,アートプレイスのメディアとしての役割をパブリック・リレーションズの視座から示すこととする。最初に企業の芸術支援に関する学際的な研究群を整理した。そのうえで,それぞれのコミュニケーション上の特徴を期間,到達範囲と深さ,コンテンツの編集権に関して提示した。これにより,企業が多様なステークホルダーとの関係構築を目指すための手がかりが得られただけでなく,芸術組織にとっても,資金提供者との交流の場を共有する意義が示された。